けもフレ神学用語辞典

アムールユダ Amur Judas / Amur Júdás

　イスカリオテのユダがアムールトラに転生した姿．

　ユダはイエスを裏切った使徒として新約聖書に登場する．
　そのため，庇いようのない悪人として，かつては描かれてきた．
　ダンテ『神曲』地獄篇でも，地獄の最下層，裏切者が葬られる地獄第九圏の氷地獄コキュートスの中央で魔王に噛み締められるという，最も残酷な罰を受ける最重罪人として描かれている．
　コキュートス中央の円の名前「ジュデッカ」も，ユダに因むものである．

　しかし，
「イエスは裏切りを予知していたのに，なぜ回避できなかったのか？」
という点はキリスト教神学では大きな謎とされている．

　そのため近年では，ユダの裏切りも神の壮大な計画の一つであるとか，敢えて裏切り役を引き受けた裏の忠臣であるとかいう解釈も登場．
　それに引きずられるかのように，創作物でのユダの描写も悪人イメージではなくなりつつある．

　たとえば中村光『聖☆おにいさん』のユダは，上述の「ジュデッカ」から釈放され，イエスや他の使徒とも和解していると描かれ，

諸星大二郎「生命の木」（『妖怪ハンター』所収）では，重太は，何をしたせいなのかの描写も無く，ただ「わしだけ行けぬ」存在となっている．


　平野耕太『HELLSING』では，「イスカリオテ」の名を持つヴァチカン法王庁の非公式特務部隊が登場し，「平野綾との結婚のおぜん立て」以外のあらゆる汚れ仕事を神に代わって執行する．



　□もそのような傾向に漏れず，アムールユダはルシファーの計画を阻止するため，あえて全方向に牙を剥く存在として描かれ，最期は屋上にいたにも関わらず頭上から瓦礫を降らせ，地の底深くに自らを封印する．
　このアニメにクリスチャン木村の述べる「上の人」，すなわち神の意思が関与しているとするならば，「敢えて裏切り役を引き受けた裏の忠臣」解釈を神の意思が肯定していることを意味するため，今後，神学会に大きな波紋を呼ぶ可能性もある．